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勇者たちの中学受験を読んだ感想①エピソードⅡについて



おおたとしまささん著の「勇者たちの中学受験」を読みました。

僕自身が早稲アカでの校長経験者という立場であり、息子を早稲アカに通わせている保護者という両面で読んだ時に、いろいろな思いがかけめぐったので、その内容をここに書いておきます。


まず、この本の受け止め方が重要だな、というのが最初の感想です。いくつか例をピックアップします。


①エピソードⅡ ハヤトの母親について

早稲アカがdisられている?というのがこの章ですが、正直僕の感想は「入試直前期に、そう感じちゃう母親の心情を描いたもの」であり、万人がそう感じるものでもないし、早稲アカの実態が、下位クラスの生徒を放置している、というのは大きく事実と異なると思います。


まず下位クラスの生徒の対応について書きます。僕自身も現役講師の時に、何度も1番下のクラスの算数を担当しました。(学年問わず)その際に、その子たちを放置するような対応をしていたか?というと、そんなことはありません。正直、この一文は、現役の先生たちが読んだら、怒るだろうな、と感じます。


また僕が校長時代に、下位クラスのご家庭を見放していたか?というと、そんなことはしませんでしたし、先生たちも一生懸命対応してくれていました。


実際、下位クラスの生徒たちの対応は、上位クラスの対応より手間がかかります。同じことを教えても吸収するスピードが違います。また同じことを何度も教えても理解してくれないこともあります。だからむしろ、手をかけているのは下位クラスの生徒でした。


でも、個人的に下位クラスの保護者で「ほっとかれている」と感じてしまう方は、塾や校長とうまくコミュニケーションを図れない場合であり、塾でやっていることが伝わらず、結果の成績を見てその対応を判断しがちです。


そこには、僕も親として共感する部分があります。コミュニケーションを遠慮する、その根底にあるのが「うちみたいな成績の悪い子が、先生に相談するなんていいのかしら?」という遠慮です。最初はそういう遠慮でコミュニケーションを取るのを躊躇うのですが、時間を重ねるにつれ、周りの話を聴くにつれ、「上位クラスの子は優遇されてる」という感覚に変わるのです。


シンプルに、家庭が積極的に関わればクラスがどこであろうと、講師は真剣に対応します。むしろ、ほっといているのは自分(親)なんです。子どものやる気に任せて、とか、中学受験で成績を伸ばすためには、さすがにそれは無理です。


要は、今回のケースでいうと、下位クラスは課題を丸投げにして放置、というのは「そう感じてしまう親の心理描写」であり、すべての事象に当てはまらないので、ご安心ください。


もし、そう感じている節があれば、ぜひ親の方が積極的に関与することお勧めします。もちろん、塾の先生から積極的に関与してくれるのが理想ですし、中には下位クラスでも、そういう先生もいらっしゃいます。でも、そういう先生はレアケース。あたったらラッキーくらいのレベルです。ですから、塾からのアクションに期待するだけではなく、親からのアクションをすることが、中学受験では重要ですよ、という話ですね。


②エピソードⅡ 1/31講師の罵倒について

一方で、あまりに塾に頼りすぎるというのも問題です。エピソード2で話題になったのは、1/31に罵倒された、という文言。冷静に考えてみてください、入試前日に悪意を持って罵倒する講師が、長く最難関クラスを担当できると思いますか?

僕は、このテキストを読んだ時に、「あ、ハヤトの嫉妬心じゃないかな?」と感じました。


どういうことかというと、母親が本来向けるべき愛情や関心を、受験の合格に導いてくれる先生に向けたことで、本人が「僕なんかより先生が気になるんだ」という気持ちになって、その対象に敵意を向けている、という状態です。


僕個人として、そんな状態に陥った生徒は見たことはないですが、中学受験はとりわけ先生に媚びへつらう母親が存在するのも事実です。昔々、まだ受験が終わる前に、高級ネクタイやチョコレートなどを持参して、せっせと自分の息子のために、なんとかしてほしいと懇願する例もありました。


話を戻すと、ハヤトが入試前日に受けたのはたぶん「激励」です。そして、そのメッセージの一部を切り取って理解してしまったのでは?というのが僕の理解です。


要は、敵意を向けている先生や大人からのメッセージを曲解して受け止めたのでしょう。発達障害的な要素も持ち合わせてると書いてあったので、先生が伝えたかった本意が伝わらなかったのかもしれません。本当ならやる気にさせるためのメッセージが、ネガティブな側面だけ強調されて伝わってしまうという。ちょっと悲しい出来事ですね・・・。


別にこの母親を非難するつもりはありませんし、事実として描かれているので、この表現が正しいかどうか?はわかりませんが、あえていうのであれば、塾に依存するな、本人をよく見ろ、これがこの章のメッセージではないかと思います。


③エピソードⅡ 無料灘ツアーについて

最後に、灘ツアーの件についても触れておきます。

確かに、行きもしない学校の合格を勝ち取ることは、塾の宣伝に使われるだけであり、大人が止めるべき、と巻末で著者も書いていますが、僕は正直そうは思いません。


なぜか受験の業界だけが、そんな風に揶揄されるのがわかりませんが、個人スポーツの世界で例えると、冷静に考えるとおかしいのです。


例えば、個人競技でいろんなコンテストで優勝するのは、とても賞賛されます。それを、君は別の大会でも優勝したから、今回は受けないでね!なんて言わないですよね。


勉強も同じように、自分の努力がどこまで通じるのか?を試したい!というのはその通りだと思います。学校側も辞退を予測して合格者や繰り上げ合格を出すわけですから、それによって行きたい人が行けない、ということも起こり得ません。


むしろスポーツや音楽の競争の方が残酷。だって、同時期に絶対に勝てない天才が常に賞賛を浴びて、自分は二番手かそれ以下でい続けないといけないことが起こり得ます。


また、非難されるポイントが「特待のように無料で招待されるから」であり、その出所が、お金を払っている別の塾生だから、という観点が挙げられますが、これももっとビジネスパーソンとして大人は冷静に考えるべきです。


塾というサービスを提供している以上、その大半が授業料収入であり、どの費用も出所は授業料です。例えば、人件費、家賃、広告宣伝費、これは経営にすべて必要な経費であり、使うべき経費だと思います。また塾は、それぞれの経営戦略があります。早稲アカの場合「合格実績戦略」といい、難関中高の合格者を増やすこと、それも「普通の学力の子が成績を伸ばして受かること」にコアコンピタンスを置いています。(昔は)


だから、早稲アカの場合、NN単独で考えたら、あれは外から見てても採算ありません。NNって、生徒が100名いても、売上200万円/月くらいですよね?(単月月謝20,000円として)、そこにあれだけの人材と、教材作成費、会場費用、事務経費、その他を考えたら、まったく割に合わないと思います。NN事業部ってのがあったら赤字でしょうね。


それでも、やりきるのは何のため?って言ったら経営戦略としての難関中学合格者増加のためだろうし、そこはブランド投資として、有益なサービスを適正価格で、って考えているんだと思います。


ちなみに、僕が社長ならNNは50,000円/月でもきついと感じます。だから他の塾が真似できないんですよね。批判するくらいならやってみろ!って話です。


灘ツアーに話を戻すと、もちろん進学塾ですから、有名難関中学への合格実績がある方がいいに決まってます。合格実績を出さない塾は顧客も選ばないですし。


それを無料でやることが、「合格実績を買っている」ような捉え方をする方が多くいらっしゃいますけど、それってどの業界のマーケティングでも行われていますよね?みなさんお勤めの会社でもありませんか?BtoBなら、尚更ですよ。(例えば某有名採用媒体は、大手にはタダでもいいから求人載せてくれってやってます。)


同じように、僕のコンサルしているリフォーム業界の場合、値下げしたり無料!という名目の裏には、その工事をしたら顔出しで新聞に載ってもらったり、動画に出演したりしていただきます。そしてのその素材を活用して広告宣伝をするのです。つまりは次の集客のためですよね。


同様に、全国展開などを考えている企業が、自社の指導力をPRするために、「うちは灘に合格させる実績があります!!」といくら言葉だけで伝えても、説得力に欠けます。灘に合格できる指導力は、灘の合格者でしか顧客に示せません。


こと教育となると、マーケティングの部分がとてもうがった見られ方をしますが、僕は経営戦略で見た時には、企業として妥当な判断だと感じます。


また子どもにとっても、将来僕も小6になったらバスツアー行くんだ!とご褒美的な感覚で頑張る動機にもなりますよね。すべてが悪いことではない、というのが僕の感想です。


でも、それが一部生徒のみのための「ひいき」と感じさせるものが、露骨に感じてしまうので、批判的な目が集まるのだと思います。中学受験はそもそも「お金持ちがお金持ちのエリートコースに乗せるための選別受験」のような感覚で深層心理では考えている人、いっぱいいるでしょうからね。そんなこと、全くないんですけど。


さて、全体を通じて本の内容はとても興味深く読みました。EP①の父親のことも書きたかったのですが、あまりに膨大になりそうなので、また次回に。


週末、サロン内で中受終了保護者を交えた、本書の対談会を実施しますので詳しくはそこでも。

https://lounge.dmm.com/detail/4025/index/






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