top of page

国語の学力を伸ばすためには?⑫<論理力・記述問題>

更新日:4月1日



中学受験Three Starsの国語担当、大谷です。

「国語の学力を伸ばすためには?」をテーマにしたブログ第12回です。

今回のテーマは、「論理力 記述問題」です。

……………………………………………………………………………………………………………

「王様は、人を殺します。」

「なぜ殺すのだ。」

「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」

「たくさんの人を殺したのか。」

「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」

「おどろいた。国王は乱心か。」

「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」

 聞いて、メロスは激怒した。「呆れた王だ。生かして置けぬ。」

 メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏(けいり)に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。

「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。

「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」

「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いてつぶやき、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」

「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」

「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」

……………………………………………………………………………………………………………


この文章に「メロスは激怒した」とありますが、この部分を下線部として、問題と模範解答を作ってみてください、という宿題を前回に出しました。



最もシンプルに思いつくのは、「メロスは激怒したとありますが、なぜですか」という問いでしょう。

他のパターンとしては、「メロスは激怒したとありますが、この時の心情を詳しく説明しなさい」というパターンでしょうか。


作問してみると、作問のパターンは限られていることに気が付きますね。


では、「メロスは激怒したとありますが、なぜですか」という問題とした場合、解答例はどのようになるでしょうか?


激怒した理由、つまり心情のきっかけが解答になるので、最も単純な解答は「王様が臣下を殺すと聞いたから。」となります。

「15字以内で答えなさい」という条件にすれば、これで問題は成立します。


さらにもう少し字数を増やそうと考えてみましょう。どんな説明を解答として増やしますか?

「王様が臣下を信じることができず、理由なく殺してしまうと聞いたから。」

臣下を殺す、に説明をつけて詳しくすることができます。

これで「40字以内で答えなさい」という問題が作れます。


さらにさらに解答をふくらませることはできますか?

メロスの人物説明を付け加えることができます。

「メロスは人の心を疑うことは悪徳だと考えていた。それに対し、王様は臣下の忠誠を疑い理由なく殺していた。その王様の心構えが許せなかったから激怒した。」

これで、「80字以内で答えなさい」という問題が作成できました。


さて、ここまで考えて何か気づくことはありませんか?

そう、問題の制限字数は、解答を作ったあとに後付けで設定されます。

そして、制限字数のバージョンはいくらでも変更できます。


ただ、どのバージョンでも変わらないものがありますね。

それが「解答の核」です。この場合であれば「王様が臣下を殺した」ということですね。


つまり、どんな制限字数の記述であっても、まず「解答の核」を作ってから、そのうえに字数に応じて説明を足していく、というアプローチの仕方が記述の解法だと言えるわけです。



【国語を読み解く10のロジック】

その3.記述は「核」を決めてから説明を積む


特に制限字数の多い記述に強くなりたい方は、「核」だけを下書きする練習をしてみると効果的です。



このロジックは、中学受験Three Starsの動画

・小4上 第7回、第11回、第20回

・小4下 第6回、第18回

・小5上 第3回、第16回

・小5下 第17回

・小6上 第1回

で扱っています。動画の解説を参考にしてください。

それではまた来週!


閲覧数:195回1件のコメント

最新記事

すべて表示
bottom of page