先日のAyaさんの個別進学館に関する記事、顧客目線でしっかりと切るところを切っていて鋭いなと思った次第です。一方で、業界に携わる人間として、カウンターを置いておかないといけないなと思い、この記事を書かせていただいています。
個別進学館ですが、軽食スペースがある校舎や自習室がある校舎もあります。私の校舎のお子様は、集団の自習室より直接見られていて遊んでいる子もいないから個別の自習室が好き、という子もいらっしゃり、終わった後自校舎でさらに自習して、あるいは私に声をかけてから帰宅するお子様もいらっしゃいます。ですので、まずは設備の内覧などはなさると良いと思います。(断りづらい性格の方は……がんばって……!)
実は私は若手時代、「個別併用したほうがいいですか?」という保護者様からの提案を曲解していて、私の力量不足なのではないか、と捉え、私が個別対応するので大丈夫です、と言うようにしていた時代もありました。
ところが、数年後、社内ミーティングで「個別受けようか迷っている家庭に不要ですって言うのは個別進学館に対する営業妨害にあたるのではないか?」という営利企業的な発言を上長がしたことにより、半分「そういえばそうだな」という認識を持ちました。
早稲田アカデミーと早稲田アカデミー個別進学館は、経営母体を同じくする企業ですから、もちろん上長の言ったことは間違いではありませんし、一社員としては模範的な言動です。講師のプライドだけで、お子様が成績を上げるチャンス、新たな講師との出会いを妨げるのは間違っています。
保護者様から見て、この方若そうだな、と思った場合で個別の併用を止められた場合は、もしかしたら講師のプライドによってチャンスを妨げられている可能性も…
私が個別の併用を止めるパターンは、国語の宿題(私が出すのは漢字とことば、と練成問題集の知識事項のみ)すら回せていないとき及び、お子様が授業前、授業後の個別対応時にも真面目さに欠けるケース(後者はそもそも致命的だが……)のときだけです(ただし、私個人との関係性のみ悪い場合は除く)。この場合、当然個別の時間と費用を無駄遣いするだけで費用対効果なんてものは全くありません。
同様、私のポリシーとして、会社の利益とかは関係なく、お子様にとって最良の選択をしてもらうために、塾をやめたり環境を変えたりする決断を止めることはあまりありません。ほかの講師にはなかなかいないかもしれませんが、帰国入試の生徒と沢山携わる中で、ダブルスクールという選択肢を取らざるを得ない子供たちが多いことも分かったからです。
基本的に個別の併用の場合算数の併用をすることが多いかと思います。そうすると、自然に授業は集団の授業で分からなかったところの補足説明が中心になります。ただし、ここで使い方を誤ると、子供が説明を受けたことで出来た気になって帰ってくるけど実は全然できていない。というケースに陥りがちです。なので、毎回の保護者ご要望の点には必ず、「どのようにして解くのか」、「なぜそうするのか」という発問を欠かさないように(自分で考えて習得するため)してもらうとよいと思われます。
また、集団校舎だと、講師の個別対応にも限界があり、全ての家庭のニーズに対応していたら講師の身体が持たなくなります。校舎では、授業前に生徒が受付前に集まって算数と理科の質問で待機しており、授業後も質問を受付ている算数担当はいつ保護者対応をしているのだろうと不思議に思うことがあります。一方で文系の私は基本、2年に1度国語で2クラス、社会で2クラスの生徒の授業を見て、例年70人ほどの授業をし、基本的には校舎で成績が振るわないクラスから担当をします。70人となると、個別の答案を見る余裕は全くありません。テストを全て解いて、設問毎のマルバツ表(四谷テストのS-P表を活用しています)を作成し、成績の上下を見るので基本的には精一杯です。できる生徒対応といえば、成績が悪かった子の心理的フォローと、授業後に数名で4科のまとめの文章部分を解くという対応まで。教材のオススメなどはごくまれにしますが、そもそも練成問題集を宿題にしないのでそれを出せば十分個別課題になるのです。
しかも、小6の後期に至ってはほとんどの子から過去問が提出されるため、前期と小5担当をやっているうちに過去問を解いておき、ポイントをまとめておく必要があります。それでも、1人の過去問チェックに使える時間は5~10分が限界。
ですので、こちらから個別の併用をオススメするのは予め小5の面談の際にある程度関係を築いている家庭に「過去問チェックで不満がある際は申し訳ないですが個別の検討を」とお願いすることくらいです。
私は国語担当なので、国語の個別を検討された場合は「どうしてそこを使って答えを作るのか」を理解させてもらうことに重点を置いています。教材は宿題に出していない練成問題集の文章題を使用するようにお願いします。授業の補足であり、人に教えて貰ったら解ける、ではなく自分の力でたどり着いた、という感覚を手に入れてもらいたいからです。
そして、お子様の志望校や成績状況に応じて記述の問題が多い大問や記号選択の多い大問など、基本的に授業で使う問題を決めて個別の先生にはお願いしています。(もちろん、これは普通家庭で準備する範囲だとはわかっていますが、自分の教えている科目で苦しんでいるのだから、手助けをしたいと思うのは人として自然な流れかもしれません。)
気になる連携についてですが、事実、併用している生徒の情報は個別進学館からは割といい情報が来ているらしいです。しかし、ほかの種々の資料同様、個人情報でもあることからヒラの講師にその情報が伝達されることはほとんどありません。
ですので、私は、お子様に授業記録の提出をして頂いたり、こちら(集団側)の要望をメモで渡して頂いたり、3ヶ月に1度ほど個人的に個別の校長と15分ほど面談をしたりします。ちなみにこれらは全てまったくもって独断の好き勝手で行っており必須業務ではありません(個別の校長も気さくに受け入れてくださいますが、内心どう思っていらっしゃるのかたまに気になることがあります) ので、Ayaさんのおっしゃる通り、普通の校舎との連携はあまり手厚くはありません。
基本的に弱点補強のために通っていただく個別、最近新規開校校舎が続々と増えています。私が中学受験をしたころよりも個別塾の市場規模は大きくなっています。我々Three Starsの動画等のコンテンツもそうですが、「これがあるから普段の授業は適当でいいや」では困ります。集団塾はテストと競争環境提供の場という面だけではないはずです。
個別の併用、家庭教師の併用はお金のかかる選択です。なんとなく使うのではなく、目的をもって、十分に検討して活用することをお勧めします。
長くなりましたが、読んで頂きありがとうございました。
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