【国語を読み解く10のロジック】
その3.記述は「核」を決めてから説明を積む
中学受験Three Starsの国語担当、大谷です。
「国語の学力を伸ばすためには?」をテーマにしたブログ第11回です。
今回のテーマは、「論理力 記述問題」です。
皆さんのお子様は記述問題に対してどういう印象を抱いているでしょうか?
一般的には「難しい」と思われてるのでしょうが、国語講師からすると記述は安定して得点がとれるチャンス問題です。
「なかなか記述問題が埋まらない…」とお悩みのご家庭は、是非一緒にトレーニングしてあげましょう。
さて、それでは記述のロジックについて考えるために、今回も作問に挑戦してみましょう。
太宰治「走れメロス」をモチーフにレッツチャレンジです。
……………………………………………………………………………………………………………
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣(よつぎ)を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
聞いて、メロスは激怒した。「呆れた王だ。生かして置けぬ。」
メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏(けいり)に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳をもって問いつめた。その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。
「おまえがか?」王は、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」とメロスは、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いてつぶやき、ほっと溜息をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが嘲笑した。「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
「だまれ、下賤(げせん)の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔(はりつけ)になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
……………………………………………………………………………………………………………
この文章13行目に「メロスは激怒した」とありますが、この部分を下線部として、問題と模範解答を作ってみてください。
是非皆さんの取り組みをシェアしたいので、できた方はコメントやDMに送ってほしいんですけど、提出してくれる人はなかなかいませんね。。
ただブログを読んで「へぇ」と思うより、実際に考えて言語化してみるとすっと腑に落ちると思いますよ!
それではまた来週。
Comments